さくらんぼ雑学 小野まるしょう農園

さくらんぼの栽培産地

さくらんぼの産地

さくらんぼの産地といえばほとんどの人は山形県を思い浮かべるでしょう。その通り、日本で生産されるさくらんぼの7割強が山形県で生産されています。次いで北海道、山梨、青森となり、その他の産地として秋田、福島、長野と続きます。
寒い地域である東北・北海道が主要産地で、山梨はさくらんぼ産地の「南限」とも言われています。
そう、さくらんぼは寒い地域の果物なのです。落葉果樹であるさくらんぼは冬の寒さに一定時間遭遇することが必要で、落葉して休眠期に入った後7℃以下に1200〜1600時間遭遇するという低温要求を満たさないと休眠から覚めないと言われています。
周囲を山に囲まれた山梨県は、内陸性の気候で冬は結構気温が下がることから、さくらんぼ栽培適地の南限ということだと思われます。
もちろん冬に寒いだけでは駄目で、日照時間が長いことなども必要な条件となります。
ところで、近年の温暖化によって南限といわれている山梨県ではさくらんぼが作りにくくなるのでは、という話があります。すぐに作れなくなるということではないでしょうが、ここ数年は異常気象で結実確保が難しくなってきているという実感はあります。


さくらんぼは自分の花粉では結実しない

 

ほとんどのさくらんぼは自分の花粉が雌しべに付いても受粉しない自家不和合性という性質を持っています。つまり佐藤錦の花粉が佐藤錦の花の雌しべに付いても受粉・結実しないのです。そのため和合性のある別の品種の花粉を付けてあげる必要があり、例えば、佐藤錦に高砂の花粉を、高砂にナポレオンの花粉を付けるということが必要になります。さくらんぼは2つの品種を植えないと実が成らないと言われるのはこのような理由からで、当園でも一つの園内に数種類さくらんぼを混植しています。
別の品種の花粉を付ける方法として、
@自然の風
A蜜蜂などの訪花昆虫
B毛ばたきで2種類のさくらんぼの花を交互に撫でる人工授粉
C毛ばたきに和合性のある花粉を付けて花を撫でる人工授粉
があります。同時期に2種類以上のさくらんぼの花が開花していれば@〜Bの方法も有効ですが 混植園であっても各品種の開花時期がずれているとCの方法しかありません。山梨の主要品種である高砂と佐藤錦は開花期のずれがあることや@Aの方法が不確実さを払拭できないことから、現状ではCの方法で人工授粉を行うことが必須となっています。
さくらんぼの花粉
それでは、毛ばたきに付ける和合性のある花粉はどうやって手に入れるのでしょうか?
開花の順序は高砂と紅秀峰がほぼ同時期、遅れて佐藤錦とナポレオンがほぼ同時期という感じですので、佐藤錦の人工授粉には先に咲いた高砂の花から取った花粉を使うことができます。しかし一番先に咲く高砂には使える花粉がありません。そのため、前年にナポレオンや佐藤錦の花から取った花粉を1年間保存しておいて次年度の高砂の人工授粉に使います。低温乾燥状態で保存しておけば1年後でも発芽して使えます。
大変な作業ですが、結実確保のためには欠かすことができないものです。


さくらんぼの結実を妨げるもの

先に自家不和合性と人工授粉の話をしましたが、さくらんぼの結実に影響する項目を挙げてみます。

低温と降霜の被害

さくらんぼの蕾が膨らみ始めて開花するまでの3月の下旬頃に、概ね−2℃以下になって降霜があると雌しべが駄目になってしまいます。
降霜の被害を受けた花は開花しても雌しべが欠損していて当然結実はできません。
自然相手なので完全な対策は難しいのですが、少しでも被害を少なくするために降霜がありそうな日には次のような対策をしています。
@雨除けハウスの天井ビニールをかけることでハウス内の温度が1℃くらい高くなるので被害が減るはず。
A土壌が乾燥していると被害を受けやすくなるので灌水を行う。
B地上(土壌)に近いほど温度が下がりやすいため降霜の被害は低い枝に多くなりますが、
 高い枝の花は大丈夫なことも多いです。
 そんな場合は高い枝の人工授粉を丁寧にやって全体として結実を確保するしかありません。

受粉のタイミング

さくらんぼの花は開花してから3日目までが受粉確率が高いと言われています。
そのため開花直後に人工授粉を行うのが良いのですが、花も徐々に咲いてくるので満開を待つのではなく毎日こまめに受粉することが必要です。

開花期の天候の影響

人工授粉に適した天候は、晴天で風が弱く気温15℃〜20℃程度と言われますが、開花期に良い天気に恵まれるとは限りません。
開花期間は短いですし前記の受粉のタイミングもありますので、天候に恵まれない場合は人工授粉の回数を増やして結実の確率を上げる努力が必要です。

高温の被害

寒冷地果樹のさくらんぼは、気温が25℃以上になると雌しべがダメージを受け受粉可能期間が短くなってしまうということがあります。
高温を受ける前に受粉させてしまうのが良いのですが、高温を受けてしまったら時間が経つほど受粉能力がなくなってしまいますので、すぐに丁寧な人工授粉を行うしかないと思います。
最近の気象状況では開花期に25℃以上になることも珍しくなく、、高温による不作が増えてきているようです。
開花期は、たった一日の天候によって結実が左右される可能性があるドキドキの季節です。

さくらんぼは雨に当たると実が割れる

さくらんぼサイドレスハウス

さくらんぼの実が黄色くなり始めた頃から収穫期までの間に雨に当たると、実(皮の部分)が割れてしまうことが多いです。
小雨くらいならば大丈夫でも、1日中降り続くような雨では全体の3割以上割れてしまうこともあります。
実割れすると商品価値がありませんし、割れた部分からかびてきたり病気が増える原因にもなります。
そのため、さくらんぼの畑は全体をビニールハウスで覆って、雨が降ってきたら天井のビニールを広げて雨にあたらないようにします。
ハウスの側面(サイド)にはビニールはありません。(それでサイドレスのビニールハウスと呼んでいます。)
鳥による食害もひどいので、ハウス全体は天井も側面も網で覆われています。
結構高価なビニールハウスが必須となってしまうことも、さくらんぼが高価になってしまう要因の一つです。

 

元々実割れを防ぐためのビニールハウスですが、観光農園では雨でも濡れないということで便利な施設です。



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